文化部プレスリリース 2024/09/05
文化部所属の国立台湾美術館と東京藝術大学が共同で企画した展覧会「黄土水とその時代—台湾初の西洋彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」が、本日(5日)、東京藝術大学大学美術館で正式に開幕しました。開幕式には、文化部の李遠部長、国立台湾美術館の陳貺怡館長、東京藝術大学の日比野克彦学長、東京藝術大学美術館の黒川広子館長などが出席しました。この展覧会では、台湾と日本のアーティストによる58点の彫刻、絵画、文献が展示されており、2023年に国宝に指定された黄土水の代表作《甘露水》も含まれています。会期は9月6日から10月20日までです。
文化部の李遠部長(文化相)は開幕式で挨拶し、「就任から100日目に、日本を初の海外訪問国に選んだ理由は、日台文化交流という理由だけでなく、100年前に黄土水氏を育てた東京芸術大学に彼を伴って戻ることが重要だと考えたからです。『甘露水』は、海から昇る台湾のように、自信と慈しみに満ちた眼差しで世界を見つめています。台湾は、西洋や日本などの文明との交わりの中で「自分とは何か?」を常に模索してきました。そのため、文化部は2017年から台湾美術史再構築プロジェクトを通じて、台湾らしい本当の姿を見つけたいと考えています。今後も台湾と日本とが手を結び、両国の文化を世界へと広げていくことを期待しています。日台間には国交はありませんが、国交がある国よりも緊密な関係を築くことが必ずできるでしょう」と述べました。
国立台湾美術館の陳貺怡館長は、「黄土水は1915年から1922年まで東京美術学校で学び、この歴史が100年後の今日の展覧会を促しました。彼は木彫を基礎に、西洋の彫刻技術を学び始め、当時日本で非常に流行していた西洋の現代彫刻家ロダンの影響を受けた作品は、独特の個性と生命力を表現しています。また、師である高村光雲の影響も受け、台湾の地域意識を反映した作品も制作しました。今回の展覧会では、黄土水の作品を改めて整理・研究するだけでなく、当時の日本の芸術界が西洋文化の衝撃に直面した際に、どのようにして地域の特色を保とうとしたのかについて、より深い議論を展開しています。」と述べました。
日本衆議院議員の盛山正仁氏は、特別に夫人を通じて李遠部長に祝賀の手紙をお渡しされました。手紙の中には、黄土水は台湾人として初めて東京美術学校に入学し、官展に入選したことなど、台湾近代美術の先駆者として活躍された彫刻家として知られております。本展では、彼の国宝作品『甘露水』をはじめとする作品を母校の東京芸術大学に迎えて展示されますが、あわせて、黃土水が学んでいた大正から昭和初期の洋画・彫刻などの作品が展示されます。
目次
黄土水の隆盛:日本の大正時代(1912~1926)芸術における和洋融合の時代
黄土水(1895-1930)は台北で生まれ、台湾人として初めて東京美術学校に入学し、西洋近代彫刻家として初めて帝展に入選、日本の皇室や台湾の政財界からも高い評価を受けました。黄土水と日本美術の深いつながりは、今回の国立台湾美術館と東京藝術大学の共同開催をとりわけ象徴的なものにしています。
黄土水は1915年から1922年まで東京美術学校で高村光雲の教えを受け、その後1923年に東京にアトリエを構え、1930年に36歳で早世するまで活動しました。黄土水が東洋の精神と西洋の技法の融合について研究に没頭してきた10数年間、明治末期から大正初期にかけての日本社会は、新旧の価値観が影響し合いながら融合し、革新と継承が行われる世代交代の時期であり、美術界に様々なジャンルが花開いた時代でもあって、これらの背景が彼の創作の糧となっていました。
本展では、黄土水の恩師である高村光雲とその息子の高村光太郎、表現方法が黄土水に近い平櫛田中、表面的な造形よりもテーマや感情表現を重視した北村西望と荻原守衛、台湾の学生たちに大きな影響を与えた日本の洋画家・藤島武二、同じく東京美術学校で学んだ台湾の同級生である李梅樹、陳植棋、陳澄波、李石樵、郭柏川、顔水龍など、東京美術博物館の所蔵品から20世紀初頭の彫刻と絵画作品が展示されます。ご来場の皆様が黄土水の作品と同時代の芸術家との対比を楽しみながら鑑賞することで、当時の東京がどのようなものであったかを感じ取ることができ、黄土水の芸術をより深く理解されることを期待します。
不朽の黄土水:台湾の近代美術における先駆者
今回の展覧会において国立台湾美術館が企画した「黄土水特設コーナー」では、国立台湾美術館所蔵の《甘露水》、《釈迦如来》、《山本農相寿像(山本悌二郎氏)》の3点と、個人蔵から快く貸与いただいた《ガチョウ》、《歸途》、《鹿》などの代表作7点を含み、黄土水作品10点と関連する文献が展示されます。なかでも《甘露水》は、1921年の第3回帝展、1922年の「平和記念東京博覧会・台湾館」で入選したことがあり、その歴史的意義は明らかなものです。この作品は、黄土水が西洋彫刻の技法に精通していることを表しているだけでなく、アジアの女性像や観音様の神聖さなど、東洋の美学と台湾の郷土精神を最大限に引き出している事が特徴であり、言葉にせずとも、誰もが作品を通してその美的価値を直感的に感じることができる傑作であることは間違いありません。
黄土水が日本にいた期間は、明治維新以降の近代化の時代と重なっており、このような歴史の流れの中で、黄土水は西洋と日本の芸術を学びつつ、台湾の特色を生かした芸術創作を切り開こうと力を注いできました。動物や人物像から仏像、木彫や青銅から大理石彫刻まで、創作に捧げた短くも輝かしい生涯の中で、彫刻技術を追求するだけでなく、彼の作品に込められた台湾文化の自覚性は、後世の芸術家たちに多大な影響を与え、台湾の近代美術発展における先駆者となっています。
「黄土水とその時代-台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」は、豊富な展示内容に加え、東京藝術大学大学美術館において9月6日午後1時からセミナーを開催します。本展の歴史や研究成果をより多くの方々と直接共有するため、国立台湾美術館の研究員である薛燕玲氏、東京藝術大学の村上敬准教授、岡田靖准教授による講演会を行いますので、詳しくは国立台湾美術館のFacebookにてご確認ください。
国立台湾美術館について
台湾の台中市西区にある国立台湾美術館は、1988年に開館し、総面積が約10ヘクタールに及ぶ台湾最大の公共美術館です。国立台湾美術館は、視覚芸術を主軸に、台湾の近代、現代美術の所蔵、研究、展覧、教育推進に力を注いでおり、来館者に専門性が高く豊かな鑑賞環境を提供しています。
東京藝術大学について
日本の東京都台東区上野公園にある国立東京藝術大学は、1949年に東京美術学校(現美術学部)と東京音楽学校(現音楽学部)が統合して設立され、美術や音楽に関する14の学科を擁しており、美術と音楽分野における芸術家の育成に力を注いでいます。
「黄土水とその時代-台湾初の洋風彫刻家と20世紀初頭の東京美術学校」
会期:2024年9月6日至10月20日
会場:日本東京藝術大学大学美術館
主催:東京藝術大学、国立台湾美術館
キュレーター:村上敬、薛燕玲
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