【 台北 博物館 / 台北市郷土教育中心 / 自來水博物館 / 国立台湾博物館 南門館 】
目次
はじめに
台北で有名な博物館・美術館といえば故宮博物院や台北市立美術館などが有名ですが、大都市だけあって、ちょっと個性的なミュージアムもたくさんあります。その中で、今回はアクセスが便利で、内容も興味深い3ヶ所をご紹介したいと思います。雨の日でもゆっくり楽しめるミュージアム。早速出かけてみましょう。
1.萬華のレトロエリアで街の歴史を学ぶ~台北市郷土教育中心
台北の中でも、特にレトロな見どころが盛りだくさんの萬華地区。その中に「剝皮寮」と呼ばれる古い街並みを保存した地区があります。清代末期の街並みが今でも残り、歴史観光スポットとして人気が出ています。その一角にあるのが、当時の教育事情をはじめ、剝皮寮に関するさまざまな展示が楽しく見られる施設「台北市郷土教育中心」です。2007年にオープンしたこの施設では、剝皮寮の歴史が、様々な角度から学べるようになっています。子供も楽しめるブースがとても多いのですが、大人でもちょっと童心に帰って昔を懐かしむことができます。
1階の奥と2階は、台湾の教育の歴史について分かりやすく学べる展示がずらり。学校だけでなく、民間の私塾の歴史、中華圏で長く実施されてきた科挙についても説明があって、見ごたえは十分です。学校の教室を模した部屋に入ると、ちょっと気持ちがピリッとしますね。(昔の学校は台湾も日本も先生が厳しかったので)
近代医療の歴史に関する展示コーナーも充実
台北市郷土教育中心では、台湾近代医療の先駆者といわれるマッカイ博士をはじめとする、台湾の医療発展に貢献した医師の足跡についての展示も見られます。また、萬華出身で、のちに当地に診療所を構えた呂阿昌医師に関する展示もあって、地域に根差した歴史も学ぶことができますよ。2階に上がると、薬草の展示などもあり、こちらもなかなか面白いです。
偶然出会った特別展がまた楽しいです
台湾の博物館・資料館では、たまたま出会う特別展が意外と面白い、ということがよくあります。今回教育中心を訪れた際はたまたま、「生活微型博物館」という企画展が開催されていました。内容は、台北市内永春市場の風景をミニチュアで表現するというもの。台湾の伝統的な市場や小吃などがミニチュアで再現されているのですが、これがとても可愛らしいんです。かなり作りこんだミニチュアなので、目を凝らしてみると、街の人々の元気な会話が聞こえてきそうです。(こちらの企画展は2024年9月8日まで開催されます)
台北市郷土教育中心
住所:台北市萬華區廣州街101號
開館時間:9:00~17:00(月曜定休)
2.日本統治時代の台北の水を支えた施設が博物館に!~自來水博物館
台湾大学が立地する公館の町。活気ある公館夜市やちょっとおしゃれな学生街が続くこの町のはずれに、美しいバロック様式の古い建物があります。それが、「自來水博物館」です。新店溪からほど近いこの場所に、日本統治時代の1908年、台北市内の衛生状況の改善や安全な水の確保を目的として、「台北水源地ポンプ室」が建設されました。台北の町へ水道を引く必要性を説いたのは、後藤新平が招へいしたイギリス人技師・ウィリアム・バートン。彼は道半ばにして病に倒れ、この世を去りますが、彼のもとで働いていた濱野弥四郎が中心となって、水道施設の建設工事が進められ、1909年に完成した浄水場が使われるようになると、台北の水道事情は大きく改善されたそうです。
きれいに再現された水道ポンプ室
このポンプ室を設計したのは、日本統治時代に台湾の歴史建築を多く手がけた森山松之助。まるでヨーロッパの建築物のように見えるバロック様式の建物は、曲線を描く独特なつくりで、フォルムがとても美しいです。内部に入ると、そこには日本時代に実際に使われていたポンプの管が残されており、それはそれは壮観です。
このように台北の水道を支えるポンプ室も、台北の街がさらに拡大するにつれ、より大掛かりな施設にとってかわられ、その後ポンプ室としての役割を終えました。1993年には国定古蹟に指定され、保存・修復されたのち、1998年に博物館として一般公開されるようになりました。
夏はプールで水に親しもう!~園区内のプールコーナー
こちらの博物館、実は夏のシーズンに限り、敷地内にプールがオープンするんです!どちらかというと地味な印象のある自來水博物館は、夏の期間だけはプールや水遊びを楽しむ子供たちの歓声が響き渡ります。入館料も、夏の間だけは大人一人80元に値上がりしますのでご注意ください。(夏季以外は50元)
自來水博物館
住所:台北市中正區思源街1號
開館時間:9:00~17:00(月曜定休)
3.台湾の歴史の一断面を学ぶ~台湾国立博物館・南門園区
台北屈指の観光地・中正紀念堂に近い場所に、レンガ造りの建物が見えます。これは「台湾国立博物館・南門園区」といい、かつて、樟脳やアヘンを生産していた工場の跡地の一部が国立博物館の分館として活用されるようになったものです。
台湾全体の歴史や文化などを網羅的に学べる本館とは違い、こちらの展示は「樟脳」と「アヘン」に特化しています。現代の世の中ではほとんど話題になることがない樟脳、アヘン。実は、日本統治時代にこの工場ができたころには、樟脳が台湾の主要産業だったり、アヘン克服のため、いったん国営事業として規制を強めるなど、台湾の歴史の中でも重要なポジションを占める2大産品だったのです。
樟脳とアヘン~かつての主要産業の光と影を学ぶ
まずは、樟脳の展示から。樟脳は、古くから薬品などに使われていましたが、無煙火薬やセルロイドその他の工業原料に広く使われるようになり、日本統治時代には台湾の主要産業の一つになりました。当時の日本は、樟脳の生産販売を政府が独占したのですが、原木のクスノキの需要が増え、高地でクスノキが伐採できる地区に住む原住民との衝突も頻発しました。台湾の博物館は、明暗両方について比較的冷静に展示してくれることが多く、この博物館でも、樟脳の歴史の光と影の両方をバランス良く展示しています。
南門園区が整備された場所では、麻薬であるアヘンの加工も行われていました。中国大陸とともにアヘン中毒患者が非常に多かったかつての台湾。日本統治時代の台湾総督府は、このアヘンの使用をいきなり禁止にはせずに、国の専売制度を用いて、徐々に中毒患者の数を減らすことに成功したそうです。そのため、専売局のアヘン加工工場が必要になったというわけです。
石造りの別館も必見です~小白宮
博物館のメイン館の向かい側に、石造りの別棟の建物があります。ここは通称「小白宮」と呼ばれ、なんとかつてはアヘンの倉庫だったのだそうです。ここに麻薬のアヘンが大量に保管されていたかと思うと、とても奇妙な気分になりますね。今では、床が修復されて、きれいなダンスホールのような雰囲気になっています。
国立台湾博物館 南門館
住所:台北市中正區南昌路一段1號
開館時間:9:00~17:00(月曜定休)
いかがでしたか?台湾のこれまでの歩みをいろいろな角度から体感できる、個性的な博物館たち。どの施設も、観光客が殺到して、行列ができるということはまずないので、ゆっくり気ままに見学&学習が可能です。また、季節によっては雨が降ることも多い台北では、雨天の際に足を運べる観光スポットの候補があった方がよいですね。もちろん、館内は冷房が効いていて、随所に休憩できるコーナーもあります。天候に左右されずに楽しめる、博物館の観光。台北旅行の際、候補に入れておくのも良いと思います。
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