台湾での新型コロナ危機への対応〜台湾人の物語【 御書房 芸廊 】

御書房

【 台湾 コロナ 対策 / 御書房 芸廊(isart Gallary) / 高雄

(日本語翻訳=GA)

前書き

今、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るう中、私たちの生活にも大きな影響が出ています。

医療や生活経済から、旅行、教育、交通、心理面にまで……。台湾では、2002年のSARSで辛い経験をしていたことから、今回の事態に対しては、各業界でも多くの人は比較的柔軟・迅速に対応しています。

感染の拡大や未知の恐怖に直面し、私たちは人との距離を少し遠ざけざるをえないかもしれません。また、命の脅威への不安だけでなく、生活リズムや人生の歩みが崩されたり、これまでの信念や価値観を変えることになったりなど、様々な問題も生じています。

誰もが、この大混乱はいったいいつ過ぎ去るのだろうと感じています。

私自身は、飲食関係のサービス業の仕事をしています。

ご存じのように、飲食業は台湾の国民経済の支柱産業です。

経済部の統計によると、台湾の飲食業の年間売上高は2015年(6,538億台湾ドル)以降年々成長傾向にあり、昨年2019年には初めて8,000億台湾ドルを超えました(8,115億台湾ドル=約2兆8900億円)。しかし今年1、2月の総売上高は1,415億台湾ドルと、17年ぶりに最低の成長率となりました。旧正月を過ぎた3月には、毎日の報道や日常の周囲の様子を見ても、飲食業が新型コロナ拡大の影響を受けて低迷している状況がうかがえます。

かつてSARSを経験した台湾は、このような危機にどう対応しているのでしょうか。

このような時だからこそ、ここで数名の台湾人の物語をご紹介したいと思います。

紹介する方々は、世界的な著名人や、成功者や、偉大な功績者ではないかもしれません。私たちと同じような、社会や組織の中にいる一市民かもしれません。しかし、今のような特別な時には、台湾の状況を知ることで、かつて東日本大震災という辛い経験をされた日本の皆さんにとっても、不安の軽減に役立ったり、励ましになるのではないかと思います。

そしてそれが、共感を生み、「励まし合って一緒に頑張ろう!」といった心の響きになり、固定観念や考え方を変えたり、「強く生きよう」といった思いにつながって行けば、と願っています。

 

山の子は、山を愛し、山から離れられない

最初にご紹介したい人物は、「山の子」、高雄にある「 御書房 アート・カルチャースペース 」のオーナー、簡秀芽さんです。

周囲の人はみな、本名ではなく、尊敬の意をこめて「簡お姉さん」と呼んでいます。

彼女の出身は、嘉義県梅山郷の最辺縁にある太和村という標高900mの村です。

太和村は豊かな自然環境に恵まれた土地で、村の南側には奮起湖、北側には清水渓、その対岸側には有名な草嶺風景区があり、更に村の西側にも有名な瑞里風景区、東側に来吉風景区があります。この一帯は標高が高く、起伏の激しい山々に杉や竹の森林が広がっています。今から10数年前には、村の経済を支えるため観光果樹園が盛んになり、村全体にスモモの木が植樹されたため、毎年1月になると白いスモモの花が一面に咲く美しい光景が見られます。しかし近年は、経済的効果が見合わないことから、多くの農家がスモモをやめて茶を栽培するようになりました。

彼女の「秀芽」という名は、父親がつけたそうです。

漢字の「秀」は「素晴らしい」という意味、「芽」は生命の息吹を表わしています。

山に囲まれて育った彼女は、草木が季節ごとに成長し変化する姿や、生命の息吹がゆっくりと芽生え、ひっそりと静止していく様子を感じながら成長してきました。歳月を重ねる中で、この大自然の栄養が、彼女の精神、つまり人・動物・環境などあらゆる事物を慈しみ、感謝する気持ちを育んできたのです。

おおらかな雰囲気をまとった彼女の風貌からは、温かさ、信念の強さと柔らかさがにじみ出ています。飾り気がなく、のんびりとしていて、謙虚で穏やかな印象の女性です。

御書房 」は、彼女が1984年9月28日に、高雄文化センターの近くで創業しました。厳選された食材を使った食事とお茶が楽しめるアート・カルチャースペースです。

高雄地方がまだ「文化の砂漠」と呼ばれていた1980年代初頭に、彼女は「御書房」で来店客の為に、知的刺激に満ちた豊富な蔵書を開放しました。また店内では、隅々までアート作品を配置したり、不定期に芸術文化イベントを開催したりしたほか、座席には親しみやすく座り心地の良い竹製の椅子を使用しました。並べられた鉢植えの植物は、自由に枝を伸ばして美しい香りを放ち、入口や裏庭には木、草、花……四季折々の自然に彩られたこの活力溢れる空間で、客たちは、優しい陶器の食器に触れ、上品な香りのお茶を楽むことで、心も体も自然とリラックスできるのです。

大自然の山が簡お姉さんに授けた感性と明晰さがそれを成しえたのだと思います。御書房の空間には、不自然さや技巧的な威圧感が微塵もなく、全てが完璧に溶け合い、気品と知性を静かに漂わせていました。

あれは私が中学2年生の頃だったと思います。私は高雄文化センターの真向かいにある中学校に通っていたのですが、「大人の文化」を味わってみたくて、思い切って、ある日曜日に仲のよいクラスメート2人と、かの「御書房」に行ってみようと約束をしました。

ところが約束の当日、道路を渡る時に交通事故を目撃してしまい、私たち三人は警察に連絡したり、怪我人を見守ったりして、ハラハラしながら時間が過ぎ、結局行けないままになってしまいました。

ようやく「御書房」を訪れる機会があったのは、大人になって何年もたってからのことでした。

2009年8月、モーラコット台風が台湾の中南部と東南部を相次いで襲いました(通称「八八水害」と呼ばれています)。この災害で、簡お姉さんは、いかに自分が山や林に守られているかを改めて知ることになりました。渓流が夜中に急激に水位を増し、一家はあわや命を落とすところだったのです。彼女は「生命」という深遠な、でも心を圧迫しない、このテーマについて、改めて思いを巡らせました。

当時、一本の古い欅の木が、水に流されそうになった台地を守ったのです。高齢の父親や弟を含め簡お姉さんの一家は、連夜の豪雨の中で30時間以上も救助を待ち、低体温のリスクに直面しながらも何とか命を救われたのでした。 この時の誰かに支えられ、助けられ、感謝するといった経験と、そして30年余りの期間に御書房で出会ったあらゆる人・芸術・魂の命の移ろいを見てきた経験から、彼女は自分ができる事を常に察知し、関心を寄せ、そして生活の中で実践するようになりました。

今年1月下旬、新型コロナウイルス拡大の状況を見て、彼女は、お客さんや大切な従業員の健康を第一に考え、ためらうことなく、御書房を2月上旬から1ヵ月間臨時休業すると宣言しました。その間、感染状況は拡大の一途でした。彼女は状況を憂い、自分の社会的責任を感じて、どうするのが一番良いのかと考え、仲間と話し合い続けました。そして、当初予定していた営業再開日の二日前に、Facebookでこのような発表をしたのです。「36年続いた御書房は第二ステージに入ります」。 (御書房の営業延期のお知らせの詳細は以下のFacebookのリンクをご覧ください)

決断、そして次の段階

これは本当に難しい決断でした。

実店舗を経営されている多くの方(私もその一員です)には、この決断がどのような過程だったかを、きっとお分かりいただけると思います。

店舗の賃貸期間満了後は契約を継続せず、もう少し小さな、新たな空間を考えることにしました。さて、どのような空間になるでしょうか……。

私は心が躍り、とてもワクワクしています。

その新しい空間はきっと……、高雄の様々な方の時間を記憶し、互いの命の刻みを再現する空間、山のようにどっしりと揺るぎなく、人々に愛され、活気と穏やかさが共存する空間、そして躍動する情熱や緊張感で皆様をお迎えできる空間、そんな自然な有機体になるはずです。

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御書房芸廊(isart Gallary) 所在地

高雄市苓雅区和平一路149号-14号

 

 

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