【台湾 小説】6つの物語が織り成す記憶『苦雨之地』(呉明益)

台湾 小説 / 苦雨之地 / 呉明益 】

(日本語翻訳=GA)

「小説とは、人類が物語を通して文化を伝えるための一種の形態である。」- 呉明益

『自転車泥棒』では、きちんと弔うことができなかった、しっかり愛することができなかった過去が描かれていた。この小説『苦雨之地』は、真実と虚構のシーンが巧妙に織り交ぜられ、自然な形で交錯する物語が優しく静かな口調で語られており、各物語の主人公の観点でパラレルな世界が構築されている。

扉ページを開くと、そこにデザインされた記念蔵書票の美しい絵から、台湾の六つの事物が小説の骨組みとなっていることが予め告げられる。この本全体を通して奇萊山、東部の草嶺古道、雲霧林、北大武山の雲海、太平洋、淡水河の光景を通り抜け、穏やかに囁くような口調で台湾の物語が語られている。

一般的な小説は一本の主軸に乗せられた楽曲のように、ひたすら真っ直ぐに最後の終止符に向かって進んでいくのだが、この小説の6つの物語はまるで全く別次元の悠揚なジャズ曲のようだ。読者は迷霧の中を手探りしながら、調和のとれたメロディーを奏であい、綴られた物語を一文字ずつ味わいながら、その中にある音符を拾い、ぼんやりした輪郭を集め合わせて独特な人間の詩を編み出していくのだ。

その詩の中で読者と作者は対話と応答を繰り返し、心に何かを残していく。主人公の辿る道に沿って記憶が脳内に保存され、物語の結節点ごとに未知の雰囲気に導かれるが、関係性は定義されない。読者は同時に無限の想像の世界の中で物語の一部分となっていく。自分の魂を託して海に入るかのように。人間と自然の様々な共存の姿が、小説という言語形式で共感を導き出し、読者の心の奥に伝えられていく。

現代社会においてできることは、自己を保ち時を待つことだけだ。病の苦しみは癒せても、心の奥に刻まれた傷あとは残るのだ。 『苦雨之地(The Land of Little Rain)』における精神の進化の道筋は湮滅と復活であり、残されるのは乳と蜜の地(The Land of Miland and Honey)である。

「私は、私の人生を小説として書いているのではなく、小説を書くことで私の人生を変えているのだ。」- 呉明益

●一番上の写真は台湾・花蓮

苦雨之地

博客来(Books.com.tw) – 苦雨之地

 

 

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