【 美麗島紀行 / 乃南アサ / 日台 歴史 】
(日本語翻訳=Tannen、Kotaro)
美麗島 – 台湾と日本の歴史の絆
歴史は、現在と過去の精神をつなげる架橋であり、事実を説明することで感情を繋げていく学問でもあります。歴史がなければ、人は迷った船員みたいに、どこに行くべきか方向性が分からなくなってしまいます。自分が立っている場所の歴史を詳しく知れば、「なるほど!」という驚きと感動を得ることができます。日本と国交がない台湾は、東日本大震災が起きた後、どうして自発的に200億円を寄付したのでしょうか?これは、この本の作者である乃南アサが感じた大きな疑問です 。このようなきっかけで、彼女は台湾を訪れることをを決めました。《美麗島紀行》に書かれているのは、彼女が台湾の地で、この”疑問”への答えを考えた経過と心の変化です。
「私たちの世代は、”台湾はかつて日本の植民地だった”という事実さえ知らなかった。その上、このように重要な現代史は、授業で教わる時間も本当に少なかった」。作者は学生時代の経験を振り返って、このように語ります。1960年代に生まれた台湾人もまた、日本統治時代(1895〜1945)の歴史に詳しくありません。台湾人にとって終戦は、日本統治時代の不平等な扱いから抜け出せた光復の喜びであった、というのが、この50年に対する歴史認識ですが、もちろんこれは、歴史教育と政治が生み出したものでもあります。一方で、作者がこの本の中で語る歴史的な感情というものは、2011年以降の台湾と日本の時間的・空間的な新しい関係の中から生まれてきたものです。私たちがこの本から学べることは、歴史認識と自分自身の経験が組み合わさってこと、共感をもたらすことができるのだということです。私たちは自分の率直な疑問から出発して、勇気をもって歴史的事実に向き合うべきなのです。作者の紹介を通じて、私たちは台湾の歴史を、出来事の年代背景だけでなく、鮮やか、かつ詳しく知ることができます。
現地を実際に訪ねる中で、50年に及ぶ日本統治時代から保存されている歴史ある建物は、作者の心に無限の懐かしさを呼び起こします。──「北白川宮能久親王の記念碑も保存されている」;茂っている植物は──「1926年に能久親王妃富子様も台湾にお越しになって新竹神社に黒い松をお植えになった」と記し、作者の心は時空を超えて、鮮やかに刻まれます。「美麗島紀行」に書かれている、こうした歴史的な情感も、豊かで含蓄があり、静かな言葉で興奮する気持ちを表現しています。このように歴史は私たちのすぐ身近にあり、どこででも探し出すことができます。願おうと、そうでなかろうと。
作者も日本統治時代を過ごしたお年寄りたちにインタビューをしました。例えば「一生に三つの名前がある老人」とか;台湾で日本の名曲「台湾楽」や「桃太郎」を聞いたことがあるとか。彼女は異国で自分の国の歌を聞いて、歴史の絆はこんなに深く、しっかり繋がっていたことに気づきました。歌を聞くことで、彼らの年代のことが謎を解くみたいに一つ一つ分かってきたのです。
二二八国立紀念館を訪れて、「家族に送った遺書を読むと、日本の教育を受け流暢な日本語で書かれています。遺書を書いた人たちの気持ちがはっきり分かり、とても悲しかったです」。作者は、終戦後の台湾の知識人たちが悲しい運命に遭い、政府の圧制下に置かれ、”祖国”に戻ったはずなのに日本語で手紙を書いた気持ちに共感しました。
もちろん、作者は教科書のように台湾の歴史を紹介するだけではなく、台湾の歴史に豊かな情感を注入して、歴史がどのように人々の心の中に影響を及ぼしてきたのかをしっかり観察しました。そして、本を書いて大きな反響を引き起こしました。乃南アサの《美麗島紀行》は、台湾の歴史を描いた傑作です。含蓄があり、暖かい情感に溢れ、読者には細かく味わう価値があります。皆様にぜひ一度お読み頂けますように。
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