ドラマ『路~台湾エクスプレス~』から見る日本統治時代の歴史

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日台共同制作ドラマ『路(ルウ)~台湾エクスプレス~』について、前回の記事では台湾の鉄道や歴史について紹介しました。今回は台湾が日本の植民地となった歴史も踏まえ、台湾人の感想を語りたいと思います。

日本統治時代の台湾

第2話では、台湾で生まれ育ち、終戦時に日本に引き揚げた日本人「葉山勝一郎」が、数十年ぶりに旧制台北高校時代の友人である台湾人「中野赳夫(呂燿宗)」と再会したシーンが感動的でした。

ご存じの方も多いかと思いますが、台湾はかつて日本の植民地であり、日清戦争で日本に敗れた清朝が台湾を日本に割譲し、1895年から1945年に第二次世界大戦が終わるまで日本に統治されていました。その50年間の間、日本本土から多くの日本人が台湾に移り、日本統治下の台湾で生まれ、終戦後また日本に引き揚げた日本人も少なくありません。いわゆる「湾生」です。

ドラマ内の葉山も「湾生」の一人で、旧制台北高校に通っていました。ただ、当時の台湾人友人「中野赳夫(呂燿宗)」と同じ女の子を好きになってしまい、ライバル心から「彼女のご両親が結婚を許すはずないだろう。お前は台湾人だ。二等国民なんだ。」と言ってしまいます。確か原作でも似たようなニュアンスでしたが、ドラマで改めて見ると破壊力のある発言で、ネット上でも賛否両論です・・・。(ちなみに歴史上、二等ならぬ三等とも言われていたようです。)

この友人に対する罪悪感から、葉山は終戦後日本に引き揚げたきり、一度も台湾の地に踏み入れたことがありません。そしてエリックと再会したことをきっかけに、数十年ぶりに台湾へ「戻り」、旧友とも和解したのです。(ドラマ内のセリフを見ると、湾生の方は台湾へ「戻る」、ふるさとへ戻る感覚です。)

台湾の日本植民地時代の話になると、八田与一が台湾でダムを造った話や、後藤新平が台湾の衛生環境を向上させ、コレラを激減させたなど、台湾のインフラ・近代化の功績がよく紹介されると思います。もちろん八田与一などのように、献身的に台湾の開発を進めてくれた方も多いですが、やはり植民地だったので、台湾人(本島人)と日本人(内地人)の差別も多く、しばし反乱やゲリラ戦も起こっていました。

私のおばあちゃんも日本植民地時代に生まれ、しばらくは学校で日本語教育を受けていたので、今でも日本語を話せます。昔の話を聞くと、自分は台湾人(漢民族)の氏名のままで、家も貧しいので、成績が良くて勉強したくても進学できなかった。一方、友達の台湾人は日本式の氏名に変えているので、親は要職につけた。成績があまり良くなくても、お嬢様学校に入って勉強を続けることができたといいます。私は歴史の専門家ではありませんが、植民地時代という消せない過去があり、葉山や中野のようにやるせなさを感じる方も多かったと思うので、より多くの日本人・台湾人がこの歴史を理解してくれると嬉しいなと思います。

旧制台北高等学校

葉山と中野が通っていた「旧制台北高等学校」は、1922年に台北で設立された学校です。植民地時代の初期では、台湾の初等教育機関として「小学校」と「公学校」があり、小学校は当時の国語(日本語)を常用とし、日本人向けに内地を同じ教育を、公学校は台湾人向けの学校となっていました。(後に台湾人・日本人の共学も可能となり、この区別も撤廃されます)

そして、台北高等学校は「尋常科」と「高等科」が設立され、小・公学校を卒業した台湾人・日本人児童は「尋常科」に、尋常科から進学して来た生徒や、他の中学校の卒業生は入学試験を経て「高等科」に入学できます。今でいう中高一貫校みたいですね。しかも、台北高等学校の入学試験は「台湾一の難関」と言われており、高等科卒業後は、無試験で台北帝国大学(現・国立台湾大学)に入学が許可されています。また、日本内地の東京帝大、京都帝大に入学した生徒も多かったといわれます。まさにエリート中のエリートです!

なお、台北高等学校は戦後に廃校され、現在の 台湾師範大学 に昇格しました。台湾で最高峰の教育者を育成する学校です。略して「師大」といいますが、キャンパスの近くに「師大夜市」という観光地もあります。台北高等学校の沿革や出身者について、台湾師範大学が特設サイトにまとめているので、良かったらご覧ください。

ちなみに、ドラマ内で、学生だった葉山が中野に「お前は二等国民だ」と言ったシーンは、今の師範大学の禮堂(台北高等学校時代の講堂)で撮られたようです。当時の建物が現存しており、歴史を感じさせられます。

臺灣總督府臺北高等學校講堂

出典:Wikipedia「臺灣總督府臺北高等學校講堂

日本植民地時代に設立された学校

台北高等学校以外にも、植民地時代から残る大学・高校などがたくさんあります。

例えば、台湾の東大とも呼ばれる「国立台湾大学」は、昔の「台北帝国大学」で、日本の東大、京大などと同じ「旧帝大」となります。キャンパスを散策すると、赤レンガの歴史的建造物が多く残り、旧帝大の名残を感じられますが、近代的な新しい校舎もできており、最近だと伊藤豊雄がデザインした図書館も完成しています。

国立台湾大学

出典:Wikipedia「國立臺灣大學

また、台北には名門高校(男子校・女子高)がそれぞれ3校あります。日本でいう開成や灘のような名門進学校で、台湾大学への進学率も高いですが、すべて日本植民地時代に設立された学校で、今でも古い校舎が残っています。

◇台北の名門男子校御三家(高級中学=高校)

1. 台北市立建國高級中学(前身:国語学校第四附属学校増設尋常中等科)

2. 国立台湾師範大学附属高級中学(今は共学)(前身:台北州立第三中学校)

3. 台北市立成功高級中学(前身:台北州立第二中学)

建国高級中学

建国高級中学の紅楼。出典:Wikipedia

◇台北の名門女子校御三家

1. 台北市立第一女子高級中学(前身:台湾総督府国語学校第三附属学校)

2. 国立台湾師範大学附属高級中学(今は共学)

3. 台北市立成功高級中学(前身:台北州立第二中学)

台北以外に、台中、台南、高雄などの主要都市でも植民地時代に男子校、女学校が作られ、今では「台中一中」「台中二中」「台南女中」など、地名+「一中」「二中」「女中」の名が残り、各地の名門進学校となっています。

台湾総督府 (現・台湾総統府)

ドラマ中で、エリックが春香とはじめて会った時、バイクで一緒に観光していましたね。その中のワンシーン(下記)で、台湾総統府が後ろに映っています。

総統府は日本植民地時代に「台湾総督府」として建てられた建造物で、今は総統府として大統領が執務しています。このシーンを見ると、台湾人エリックと日本人春香が偶然出会い、日本に統治された時代の総統府を駆け抜け、未来に向かっていくことを想像してしまいます。なお、時期にもよりますが、平日または指定された休日に見学することができますので、ご興味あればホームページをチェックしてみてください。

ちなみに、総統府から向かって右側に、先ほど紹介した最難関女子高の「台北市立第一女子高級中学(略:北一女」の校舎があります。第二次世界大戦の時に総統府も空襲でかなり損傷を受けましたが、その近くにあった「北一女」の校舎も被害を受けました。

さらに余談で、私は高校時代の三年間、北一女に通学するため毎日総統府の前を通っていましたが、よく朝の旗揚げ(国旗を揚げる儀式)で足止めたり、一度総統府の真正面で立ち止まって靴紐を結んでいると、守備の警官や軍人が3人ほど駆けつけてきて、「何をしているのだ!」と笛を吹かれてビックリしました(笑)。やはり厳重な警備がされており、立ち止まって写真を撮ることも許されないので、観光の際はそっと通り過ぎ眺めてくださいね。

中野赳夫役・楊烈は台日結婚だった!

最後の余談で、「湾生」の葉山の旧友「中野赳夫」を演じる役者さんは、台湾人の有名俳優・演歌歌手の「 楊烈(ヤン・リエ)」です。「台湾の五木ひろし」との愛称もあります。日本語がとても流暢でびっくりしましたが、実はこの方、日本人の奥さんと結婚しているのです!インタビューで国際結婚40年目の秘訣を聞かれた際、「忍耐・覚悟」が重要と答えていました。日本語もうまくて、人生の知恵にも満ちていますね。

※本記事は下記ブログ記事を加筆したものとなります。

👉 甘党Yと辛党R|日台結婚新米夫婦の交換ブログ:

https://diary-ry.com/2020/05/30/197/

 

 

 

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