(日本語翻訳=みやび)
目次
歴史、人文、宗教、地質景観などが詰まった観光スポット、生涯一度は訪れるべき
基隆には、そこで修行して仙人の道を遂げたという古い伝説が伝わる、不思議な洞窟があります。それを聞いて、好奇心を抑えきれずにやってきたのですが、なるほど!と思いも寄らぬ景色に圧倒されました。
基隆市最初の文化的景観である基隆八景の「仙洞巌」は、清朝統治、日本統治、民国という三つの時代を乗り越え、基隆最大の天然海蝕洞に位置します。その魅力は古くから伝えられ、清朝時代は文人墨客を魅了させては詩を綴らせたほか、日本統治時代にも旅行ガイドブックに欠かさず記載されていました。さらに当時、基隆街長を務めた許梓桑氏はその美しさを以下のように綴りました。「空留石洞隱仙蹤,髣髴桃源一樣同,海國波濤長擾夢,聲聲入耳聽玲瓏。(訳:伽藍洞に隠された仙境は桃源郷を彷彿させる。荒波の音は洞窟を潜り抜けては夢に入り、玲瓏たる響きがこだまする。)」 当時のような「洞窟で反響する」ほどの魔力はもう存在しないのかもしれませんが、歴史、人文、地質景観が詰まったこの意義深い観光スポットは、生涯に一度は訪れるべきところと言えます。
天然石像芸術展覧、台湾小敦煌の異名
「仙洞巌」は基隆港の北西側の山巌に位置し、廟は山に沿って、洞窟まで広がる形で建てられました。この洞窟は長年海水の侵食を受け、深さ80メートルの天然海蝕洞窟となりました。清朝時代には元々漁師の休憩場所として使われていましたが、海上安全を祈願するため神様を祀ることになったと言われています。現在の廟の前にある広場は、当時は海中にあったので、海水が洞窟を通り抜けてできた潮音は洞窟の中にこだまし、太鼓の音を彷彿させました。この地が「洞窟で反響する」現象で著名となった理由もそこにあります。
仙洞巌は他の廟と異なり、派手な飾りを省き、素朴な美しさを一層際立たせます。また、外が明るくて内が暗いという「洞窟」の特性は、八卦の中では離卦に属し、「心」の象徴にもなります。心が真空状態になり、万物万象を感知できる霊性を手に入れる意味合いが含まれています。心を修養するには、言葉よりこのような表し方のほうがより心に沁み、理解しやすいのではないでしょうか。
日本統治時代に遡ることができる二尊の観音石像
洞窟に入るとすぐ、円通宝殿が目に入ります。円通宝殿は主祭神を観世音菩薩とし、また弥勒菩薩、韋駄菩薩、伽藍菩薩などを配祀します。通りの両側には墨蹟が残されていて、その大半は清朝時代の官僚や文人墨客が綴ったものです。「海外洞天」、「別有天地」、「仙洞」などの大字にせよ、夢龍山人の碑文「三十三天天外天,九霄雲外有神仙,神仙本是凡人做,只怕凡人心不堅(訳:凡人が近づきがたい、雲の向こうより遠いところに神仙がいる。神仙もまた、修行の苦を堪えきった凡人からなすもの。)」にせよ、どれもまるで龍や鳳凰が目の前で踊っているかのように力強く、懐古心を湧きあがらせます。
右側から入って一番奥にあるのは大雄宝殿で、両側の石壁には李榮坤氏が手掛けた石彫仏像が飾ってあります。普賢菩薩から文殊菩薩、地蔵王菩薩や観世音菩薩まで、様々な仏菩薩が生き生きとした輝きを放っています。
日本統治時代から残された二尊の観音石像――西国三十三所第九番と第十番――がさらに加わって、天然石像芸術展覧と言わんばかりです。「小敦煌」という異名にぴったりな景色と言えますね。
危機を覆す一線天
左の洞窟は「一線天」とも呼ばれ、幅の狭い入り口は一人が通るのもギリギリで、十人もいれば縦に列を並んでようやく進める程度です。回りくどい洞窟の中は起伏に富み、中に入ってすぐしゃがんで道と平行してゆっくり進まなければなりません。洞窟を抜けるにつれて視野も次第に広がり、最後は一気に開豁になって、全く違う景色が目の前に展開されていきます。大自然の不思議な変化を手本に、慈悲深き仙仏が世の中の人に危機を乗り越える方法を教えてくれているのではないでしょうか。洞窟の中の「暗闇」は「難関」を意味し、「しゃがみ込む」動作は「低姿勢になる」「謙虚になる」こと、「ゆっくり進む」というのは「着実に進む」「うまずたゆまず励む」こと、「視野の開豁」は「光は再び輝く」ことを象徴します。真理を究めるには書籍は唯一の手段ではなく、心掛ければ、真理はどこにでもひっそりと息づいているのです。
佛手洞はまるで地底迷宮、刺激を与えてくれる
隣にある「佛手洞」も天然の海蝕洞窟地形で、案内表示に沿ってすぐ入り口にたどり着きます。洞窟内は砂利道が敷設されており、照明もあるので、湿って滑りやすい道でも転ぶ心配はありません。
仙洞巌と違っているのは、まるで地底迷宮のようで、今にも冒険が始まりそうなスリリングな感覚を与えてくれるところです。すべての曲がり角に案内表示が設置してあるので、迷子になってもすぐ元の道に戻れます。
仏の手形のような節理
一番奥に行けば、石壁に人の五本の指みたいな跡が天然風化により形成されているのが見えます。仏の手形のような節理をしているので、「佛手洞」と呼ばれるようになったのです。昔は人が住んでいましたが、二次大戦期間に米軍の空襲目標にされたため、天然防空壕となりました。
「低く降りれば」乗り越えられる;「高く上向けば」光が見える。低いと高い、それぞれの趣がある。
「仙洞巌」と違って、「一線天」には体を低くし、難関を乗り越えようという意趣が含まれています。「佛手洞」は上を向き続ければやがて希望が見えてくることを教えてくれています。「低く降りれば」乗り越えられる;「高く上向けば」光が見える。低いと高い、それぞれの趣は言葉にしなくても自然と身体にしみ込むでしょう。
一面に広がる基隆港を眺めることができる最高のスポット
「仙洞巌」の横にある階段に登っていけば、「仙洞公園」にたどり着きます。面積は広くないものの見晴らしがよく、一面に広がる基隆港を眺めることができる最高のスポットです。
独特な海蝕洞窟地質景観と基隆港の美景を満喫できる旅
独特な海蝕洞窟地質景観と基隆港の美景を満喫できるほか、神々しい自然環境に囲まれながら人生の哲理を悟ることもできます。生々しい石彫仏像や歴史趣向に満ちた文人墨蹟を十分堪能してから、廟口に寄ってグルメを楽しんでみてはいかがでしょうか?きっと最高の半日コースになるはずですよ。
交通手段
【交通手段】
1、お車:ナビの目的地を仙洞巌に設定します。基隆インターチェンジで下り、忠一路→中山一路→中山四路→仁安街の道順で運転すればたどり着きます。
2、公共交通機関:バス(301、302、304号)で仙洞巌駅。そこから三分ほどで到着します。
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